裏切りの影踏み16

2019/12/24
22:22

グレた兄は家には滅多に帰って来なくなりました。
たまに帰ると、鹿美が隠しているなけなしのお金を奪っていきました。

「母さん、兄ちゃんにあげるお金あるなら、私の給食費払ってよ！」
「あんたは黙ってなさい！」

すすり泣く鹿美。

家にいたくない。
学校にも行きたくない。
でも、どこにも行くところがない。

心の拠り所はなく、精神は歪みました。
頭は円形脱毛症。
ゴッソリと髪の毛が抜け、いくつものハゲができました。

鹿子は、ひたすらに本を読みました。

酒に溺れる父親。
働き通しの母親。
顔を見ることもない兄。
部屋にこもって勉強ばかりの姉。

暖かい家庭があったのはすでに遠い記憶の彼方。

本だけが鹿子の支えでした。

「世の中にはもっともっと辛い人生がある。」
そして、
「見たこともない素晴らしい世界がある。」
その両方の事実が鹿子の精神を支えました。

続きはまた明日。

(*･ω･)b
まさこさん

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