哀しい愛の途中
- 2019/08/17
- 22:22
昨夜、布団に寝転がってスマホをいじっていたら、家の電話が鳴りました。
起きて玄関まで行って、受話器を取ろうとしたら切れました。
砂壁部屋に戻って再び布団にゴロン。
また電話。
急いで取りに行くも切れる。
三回目にやっと取れました。
「もしもし、鹿田です。」
「千恵子さんはいますか?」
「千恵子さんの家はここではないですよ。」
「そうですか。」
ガチャ。
この千恵子さんを尋ねる電話、数ヶ月おきにかかってきます。
千恵子さんは、父の妹。
もう、30年も前に亡くなっています。
亡くなった当時、この家には住んでいませんでした。
それなのに千恵子おばちゃんを尋ねる電話。
一体誰なのか、不審に思っていたのですが、最近謎が解けました。
それは、千恵子おばちゃんの旦那さん。
千恵子おばちゃんを看取った旦那さん本人が電話をしてきて、千恵子さんはいるか、と尋ねているのです。
おじちゃんには、母が闘病している頃、病院でばったり出会いました。
「母さんが入院しているの。」
「どこが悪いの?」
「うーん、今検査してるんだ。」
「僕も色々悪くてねぇ。」
「仕方ないですよねー。」
「では、また。」
おじちゃんは、若々しく、元気そうに見え、私は羨ましくさえ思いました。
その後、母自身も出会ったとのこと。
母が手術の時には、家に大きなお花のお見舞いが届きました。
お礼の電話もしました。
その後、母が亡くなり、親戚には誰1人知らせませんでした。
不義理とは思いつつ、おじちゃんにも伝えませんでした。
母の1周忌の頃、おじちゃんから電話がありました。
「お母さんはおるかね?」
「母さん、亡くなったんですよ、、、」
「あぁ、そうかね。元気なら良かった。」
「いや、あの、死んだんですよ。」
「あっはっはっはっ!良かった、良かった。気になってたんだよ。」
「、、、、、」
「みんな元気かね?」
「、、、はい、、、」
「じゃ、また!」
ガチャ。
泣きましたよ。
一体何なの?と。
その週末に姉が帰省したので、この話をし、頼みました。
「ねぇ、おじちゃんに電話してみてくれない?」
「いいけど、何で?」
「私の言い方が悪かったのかもしれない。ちゃんともう1回伝えてみて。」
「分かった。」
私は信じられなかったのです。
あの優しいおじちゃんが、母の死を笑うことなど。
「おじちゃん、鹿田の姉です。おじちゃん、元気にしてる?」
「おー元気元気!」
「この前、妹に電話くれたんだってね。今、妹から聞いたのよ。」
「そうか、そうか。みんな元気か?」
「母さん、死んだんですよ。」
「そうか、そうか、それなら良かった。」
「、、、おじちゃん、電話ありがとうね。またね。」
「鹿子。おじちゃんボケてる、、、」
「、、、そっちなの、、、」
家の電話が鳴りました。
「鹿田です。」
「今、着信があったみたいだから。おたくはどちらさん?」
「鹿田よ。おじちゃん。さっき話したからね。ありがとうね。」
「そうか、そうか。」
しばらくして、また電話。
「着信があったから。」
「うん、ありがとう。みんな元気よ。またね。」
それからというもの、昨夜のような千恵子おばちゃんを尋ねる電話がおじちゃんからかかってくるのです。
鹿田に電話している、という思いもなく。
千恵子おばちゃんが亡くなった後、独身を通したおじちゃん。
頭がボケてしまった今も、愛した千恵子おばちゃんを忘れずに追い求めていることを知って、哀しく切なくなりました。
おそらく、これは私の想像ですが、
古い電話帳に「千恵子実家」と我が家の電話番号が記されているのでしょう。
「おじちゃんが、母さん死んで笑うわけないよね。ゴメン。」
今では、定期的にかかるこの電話を私の中で「愛の確認」としています。
ボケてしまっても、おじちゃんには、いつまでも元気でいてほしい。
おじちゃんの記憶の中で、千恵子おばちゃんも、母も生き続けているから。
それは、真実だから。
おじちゃん、ずっとずっと「愛の確認」をし続けて、私に夢を見せてね。
おやすみなさい。
(*・ω・)b
ゆきんこさん、まさこさん、H.Aさん
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起きて玄関まで行って、受話器を取ろうとしたら切れました。
砂壁部屋に戻って再び布団にゴロン。
また電話。
急いで取りに行くも切れる。
三回目にやっと取れました。
「もしもし、鹿田です。」
「千恵子さんはいますか?」
「千恵子さんの家はここではないですよ。」
「そうですか。」
ガチャ。
この千恵子さんを尋ねる電話、数ヶ月おきにかかってきます。
千恵子さんは、父の妹。
もう、30年も前に亡くなっています。
亡くなった当時、この家には住んでいませんでした。
それなのに千恵子おばちゃんを尋ねる電話。
一体誰なのか、不審に思っていたのですが、最近謎が解けました。
それは、千恵子おばちゃんの旦那さん。
千恵子おばちゃんを看取った旦那さん本人が電話をしてきて、千恵子さんはいるか、と尋ねているのです。
おじちゃんには、母が闘病している頃、病院でばったり出会いました。
「母さんが入院しているの。」
「どこが悪いの?」
「うーん、今検査してるんだ。」
「僕も色々悪くてねぇ。」
「仕方ないですよねー。」
「では、また。」
おじちゃんは、若々しく、元気そうに見え、私は羨ましくさえ思いました。
その後、母自身も出会ったとのこと。
母が手術の時には、家に大きなお花のお見舞いが届きました。
お礼の電話もしました。
その後、母が亡くなり、親戚には誰1人知らせませんでした。
不義理とは思いつつ、おじちゃんにも伝えませんでした。
母の1周忌の頃、おじちゃんから電話がありました。
「お母さんはおるかね?」
「母さん、亡くなったんですよ、、、」
「あぁ、そうかね。元気なら良かった。」
「いや、あの、死んだんですよ。」
「あっはっはっはっ!良かった、良かった。気になってたんだよ。」
「、、、、、」
「みんな元気かね?」
「、、、はい、、、」
「じゃ、また!」
ガチャ。
泣きましたよ。
一体何なの?と。
その週末に姉が帰省したので、この話をし、頼みました。
「ねぇ、おじちゃんに電話してみてくれない?」
「いいけど、何で?」
「私の言い方が悪かったのかもしれない。ちゃんともう1回伝えてみて。」
「分かった。」
私は信じられなかったのです。
あの優しいおじちゃんが、母の死を笑うことなど。
「おじちゃん、鹿田の姉です。おじちゃん、元気にしてる?」
「おー元気元気!」
「この前、妹に電話くれたんだってね。今、妹から聞いたのよ。」
「そうか、そうか。みんな元気か?」
「母さん、死んだんですよ。」
「そうか、そうか、それなら良かった。」
「、、、おじちゃん、電話ありがとうね。またね。」
「鹿子。おじちゃんボケてる、、、」
「、、、そっちなの、、、」
家の電話が鳴りました。
「鹿田です。」
「今、着信があったみたいだから。おたくはどちらさん?」
「鹿田よ。おじちゃん。さっき話したからね。ありがとうね。」
「そうか、そうか。」
しばらくして、また電話。
「着信があったから。」
「うん、ありがとう。みんな元気よ。またね。」
それからというもの、昨夜のような千恵子おばちゃんを尋ねる電話がおじちゃんからかかってくるのです。
鹿田に電話している、という思いもなく。
千恵子おばちゃんが亡くなった後、独身を通したおじちゃん。
頭がボケてしまった今も、愛した千恵子おばちゃんを忘れずに追い求めていることを知って、哀しく切なくなりました。
おそらく、これは私の想像ですが、
古い電話帳に「千恵子実家」と我が家の電話番号が記されているのでしょう。
「おじちゃんが、母さん死んで笑うわけないよね。ゴメン。」
今では、定期的にかかるこの電話を私の中で「愛の確認」としています。
ボケてしまっても、おじちゃんには、いつまでも元気でいてほしい。
おじちゃんの記憶の中で、千恵子おばちゃんも、母も生き続けているから。
それは、真実だから。
おじちゃん、ずっとずっと「愛の確認」をし続けて、私に夢を見せてね。
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