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愛した人

夕飯。
「Aくん、結婚したんだって。」

「そうなんだ。もうだいぶ経つからね。」

「どうして別れたの?ケンカ?」

「いや、、、なかなか説明は難しいわ。」

「結婚すれば良かったのに。いい人だったのに。」

「、、、うん。ご両親どうしてるんだろう?」

「亡くなったって、聞いたけど、、、」

「そうなんだ。会社が倒産したのは知ってたんだけど。そっか、、、」

30代、私には結婚前提で付き合っている人がいました。
今の人とは違う人です。
20代から付き合い始め、お互いに結婚するつもりでしたが、
10年以上付き合った後に別れました。

どうして結婚しなかったのか、何度も人から聞かれましたが、
「うーん、、、」
という返答になってしまいます。
色々なことがあって、簡単には答えられません。

長い長い道を隣同士、二人で確かに歩いていたはずなのに、
気が付いた時にはもう声をかけるのもためらわれるほどに、遠く遠く離れて。

別れる時は、本当にあっけなく。
「千代桃、もう、、、」
「うん。分かった。今度返さないといけないもの渡すから、それが最後だね。」
「嫌いになったとかじゃないから。」
「うん、わかってるよ。今まで本当にありがとう。」

最後は笑って手を振りました。
その夜、少しだけ泣きました。

その彼が結婚した、と。
母は何度も会ったことがあります。
優しい彼を母はとても気に入っていました。

「早く結婚しなさいよ。」
「うん、お金ためてからね!」

20代の頃は本当にそのつもりでした。
しかし、会社の経営状態が悪くなって、民事再生手続きを受けることになり、
私は希望退職に応じました。
この頃から少しずつ歯車が狂っていきました。

彼は、私に会社に残ってほしかった。
私は、彼が30代のうちに転職して今の不安定な状況を脱して欲しかった。

会社を辞めた後も仲良く付き合っていたのですが、
先の見えている会社にしがみつく彼に私はイライラし始め、
彼は彼で自分を理解してくれない私に対する不満がたまっていきました。

お互いに緩やかに愛情がなくなってゆきました。

もっと早く別れるべきだったのに、お互いに決断できなかった。
男女としての愛情はすり減っているのに、会うと居心地がよくて、
今日も大切な話ができなかった、、、と自分を責め、
次は必ず、と思うのに、やっぱり言い出せなくて、、、
その繰り返しで時間だけが過ぎてゆきました。
用を足さない穴だらけのタオルをいつまでも使い続けているような感じです。

別れたことも、愛したことも後悔はありません。
彼の幸せをただ祈っています。
愛した人だから、幸せでいてほしい。
後悔があるとすれば、愛している、側にいたい、結婚したい、と思った時にそうしなかったことです。
でも、それももう、思い出せないほど遠い昔の出来事です。

母は何か考えるように大きなため息をつきました。

ゴメンね、と心の中でつぶやいたけれど、言葉にはできませんでした。
今亡くなったら私のことだけが心残りでしょう。
分かっているのに、どうしようもできなくて、本当に親不孝者です。

最後まで読んでいただいてありがとうございます。
おやすみなさい。

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プロフィール

鹿子

Author:鹿子
母の闘病を綴ります。すい臓がんステージ4b。糖尿病併発。ジェムザール単剤での治療選択。

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