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熱情と幻 12

入社して、どのくらい経った頃か、
もう忘れてしまいましたが、
ショウゴが、会社の跡取りとして、中途入社してきました。

各課の業務を一通り覚えるために、
私のような下っ端社員とも仕事をしました。
誰ともでも分け隔てなく付き合う、ショウゴの人柄に、
私は惹かれてゆきました。

穏やかで、ひたすらに優しいショウゴ。

「こんな人と結婚すれば、きっと幸せになれるんだろうな。」

会社帰りに食事をするようになりました。

「このまま付き合うことになるかもしれない。」

嬉しい気持ちの隣には、
まだ残るサトルへの未練がありました。

「私はまだサトルにこだわっているのか、、、」
自分に嫌気がさしました。

「もう一度だけ、サトルに会おう。私を愛しているのか、もう一度だけ。」

サトルに連絡をしました。

閉店後の美容室。

「出会ってから、だいぶ経ったね。今までに後悔とかある?」
「ない。オレ、今幸せだから。」

「自分、自分、ね。鹿子を幸せにしてやりたかった、とかさ。」
「、、、」

「愛されたかった。一度でいいから。」
「今、真剣に付き合ってる彼女がいるんだ。結婚したいと思ってる。」

「そっか。どんな人?」
「鹿子に似てる。」

「冗談やめてよ。私も好きな人がいるの。サトルとは真逆の人。きっと私を愛してくれる。裏切らない人。」
「そうか。」

「大好きだったよ、本当に。でも、許せなかった。許せたらって何度も思ったけど、出来なかった。サトルといると、苦しくなる。私ばっかりって卑屈になるのよ。」
「オレは、美容師として頑張って行く。」

「うん。もう、連絡しないから。」
「幸せになれよ。」

暗い美容室を出た後、
私は、振り向かずに自分の車まで真っ直ぐに歩きました。

(*・ω・)
まさこさん

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