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熱情と幻 6

19の冬。

久しぶりに登校したら、
同級生からお茶に誘われました。

授業を抜け出して、喫茶店へ。
レモンティー。
ストローでレモンをもて遊ぶ。

「鹿田さん、あんまり学校来ないね。」
「3月でやめるから。」

「どうするの?」
「分かんないけど。彼氏次第。」

「彼氏って?」
「ギターリストになりたいって専門学校行ってる。」

「無理やろ。」
「うん。」

「別れてオレと付き合わない?」
「またまたー。冗談ばっかり。」

「気が変わったら連絡して。」

名刺を貰ったけれど、どこに行ったか、すぐに分からなくなりました。

バイト先の料亭で、修行していた料理人。

誘われるままに、彼の実家の寿司屋でアルバイトを始めました。

兵庫県川西まで、朝早く出て通っていました。

「大丈夫か?」
「うん、忙しい時だけでしょ。来るよ。」

「彼氏と上手くいっているのか?」
「分かんない。ケンカばっかり。」

「別れろよ。オレの嫁になればいい。」
「え?何言ってるんですかー!寿司屋のおかみさんなんて無理無理!」

バイト帰り、毎日のように十三へ。

「クラスメイトと、バイト先の人、二人に告白された。」
「で?何が言いたいの?自分がもてるって言いたいわけ?」

「違うよ、、、私が誰かに取られてもいいの?」
「お前がそうしたいならそうしろよ。」

泣きながら、梅田の駅をフラフラと、
指輪をなぞりながら。

「本気になったのは鹿子が初めてなんだ。指輪、大切にしてほしい。」
あの時の言葉は本当だったはずなのに。

ギターにのめり込むサトル。
部屋に通う私を疎ましく思うようになっていきました。

「オレ、明日テストだから。」
「側にいるだけ。」

「そうゆうの、鬱陶しい。」
「ねぇ、私ってサトルの何なの?」

「だから!そうゆうのが嫌なんだよ!」
「私、どうすればいい?」

「別れよう。」
「いや!」

「迎えに行くから。地元で待ってろ。」
「いや!」

「今、大事な時なんだよ。オレ、本気でギターやりたいんだ。頼むから1人にしてくれ。」

春。

右手に海を眺めながら、
私は地元へ向かう鈍行列車に、1人で揺られていました。

どうしてこんなことになったんだろう。
好きだと言う度に、サトルの気持ちが離れてゆく。
好きだけじゃダメなの?

ギターへの情熱を消すことなど、私には出来ず、
結局、別れを受け入れたのでした。

「愛しているんだ。だけど、鹿子といると、オレはダメになる。絶対、迎えに行くから。」

そんな、勝手な彼の言葉を信じるしかないほどに、
もはや私には、他に何もすがれるものはありませんでした。

(*・ω・)
まさこさん

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