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熱情と幻 3

好きという塊が、
心の中で、どんどん大きくなってゆく。

大阪の大学を3つ受けた彼。

「受かる?」
「大丈夫!」

「私、大阪の専門学校に願書出したよ。」
「一緒に大阪行こうね。」

赤い自転車を押して、駅まで。

もっと一緒に居たくて、
隣の駅まで彼と乗って。

駅から手を繋いで、彼の家まで。

線路沿いの、海の目の前に、彼の自宅はありました。

「海!」
「近いだろ?」

「すごいね。」
「ここからの眺めが最高なんだ。」

三階の彼の部屋から、
眼前に広がる海は、キラキラと。

「お母さんは?」
「ここにはいない。あっちのビル。離婚してから、ここには親父が住んでる。」

「兄弟は?」
「たまに帰るよ。何してるか、よく知らんけど。」

男ばかり4人兄弟の末っ子。

お母さんは、駅前のビルで商売をするやり手。
お父さんは、高校の教師。

長男はプロゴルファーを目指していて、
次男は大学生。
三男は、よく分からないらしい。

裕福で、自由奔放に育った彼は、
私とは真逆の人生、性格。

人懐っこい彼。
近寄りがたい雰囲気をまとう私。

週の半分は我が家へ。

「初めまして。サトルです!」
「サトル?」

「そうよ、ねねちゃんの彼氏。」
「彼氏?」

「僕ね、ねねちゃんのことが大好きなんだよ。」
「私も、ねねちゃん好き!」

双子の甥と姪。
4人で手を繋いで歩く田んぼ道。

「どうして、ねねなの?」
「生まれたとき、私まだ中学生だったから、おねぇちゃんって呼ばせようと思ったんだけど、私にお姉ちゃんいるじゃん?混乱するから、ねねにしたの。呼びやすいから。」

「子供って可愛いなぁ。」
「本当にね。」

母の作った夕飯を一緒に。

「おばちゃん、料理上手だね!」
「あら、嬉しい!」

家族7人にサトルが混じること、
いつしか当たり前になってゆきました。

「オレ、いっつも1人だから、みんなで食べるの新鮮。」
「えー、私はたまには1人になりたいよ。」

近付く卒業。

「全部落ちた。」
「うそ!どうするの?」

「今から受けられる大学に行く。」
「どこ?」

「福岡。」
「えっ?私、大阪にしたのに、、、」

「オレたちなら、大丈夫!」
「そんな、、、」

「じゃ、どうするの?」
「、、、遠距離恋愛ね、、、」

心にある塊を、もう消すことなど出来ないと知った18の冬。

(*・ω・)
まさこさん

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