裏切りの影踏み13
- 2019/12/21
- 22:22
いつも支払いが遅れる給食費。「母さん、給食費、、、」「来週。」「もう、みんな持って来てる、、、」「仕方ないでしょ。お金ないの!」登校。穴の空いた運動靴を見つめながら、鹿子は学校へ行きたくない、と思いました。「鹿田!給食費は?」「忘れました、、、」「ちゃんとお母さんに言ってるのか?」「いえ、、、」「給食費の袋、渡せよ!」デリカシーのない教師。一軒家に住み、たくさんの習い事をさせる鹿田家が借金に追われ...
裏切りの影踏み12
- 2019/12/20
- 22:22
毎月決まった日に、キヨシ叔父さんの店の戸を叩きました。「叔父さん、今月分。」「はい。確かに。」叔父さんは、さも当然のように受け取りました。「その封筒を奪って走り出したい。」鹿子は、何度もそう思いました。「そのお金があったら、母さんはこんなに働かなくていいのに。」キヨシ叔父さんは、鹿美や鹿子がどんなにボロを着ていても、決して返済を待ってはくれませんでした。厳しい横顔が胸を離れません。鹿子の制服はいつ...
裏切りの影踏み11
- 2019/12/19
- 22:22
フルタイムで働いても食べてゆけない生活。鹿美は、内職を始めました。部屋中を埋め尽くす菓子箱。みんなで組み立てて運んで、また組み立てる。鹿子は、母の喜ぶ顔が見たくて、毎日手伝いました。けれど、鹿美はどんなに生活が苦しくとも、習い事だけは辞めさせませんでした。夜なべをしてセーターを編みました。1着三千円。1ヶ月3着編めば、子供たちに習字を習わせられる。働いても働いてもお金が消えて行く。続きはまた明日。...
裏切りの影踏み10
- 2019/12/18
- 22:22
お金がない。家のローン。子供は3人。跡取りとしての親戚付き合い。そして重く重くのしかかる連帯保証人としての借金返済。鹿子、小学校3年生。鹿美は働きに出ることにしました。玄関を開けて「ただいま!」と言う幸せは泡のように消えてしまいました。少しでも母さんの近くにいたい。鹿子は、学校帰りに毎日、鹿美が働く店のブランコに乗って母を待ちました。鹿美が側を横切るだけでも、鹿子は嬉しかったのです。大きな園芸店。...
裏切りの影踏み9
- 2019/12/17
- 22:22
鹿男の叔父が近くに住んでいました。理容店を営むキヨシ叔父さんは、お金持ちでした。3階建の自宅兼店舗は、とても立派なものでした。ある日、一番末の弟、七郎が鹿男たちの家を訪ねて来ました。「鹿男兄さん、オレ、キヨシ叔父さんからお金を借りようと思っているんだ。」「そんなに金に困っているのか。」「あぁ、、、それで、、、言いにくいんだけど、キヨシ叔父さんが、保証人がいるって、、、」「保証人、、、」「鹿男兄さん...
裏切りの影踏み8
- 2019/12/16
- 22:22
学ぶことを許されなかった鹿美は、子供達に良質の教育を受けさせたい、という気持ちを人一倍強く持っていました。習字。そろばん。ピアノ。エレクトーン。水泳。ピアノとエレクトーンは、お金を一生懸命貯めて買いました。夕方聴こえてくる、子供たちが奏でる下手っぴな音楽は、鹿美に満足感を与えてくれるものでした。。「ばぁちゃん。ばぁちゃんに会いたいけど、、、今は子供たちにお金がかかるから、もう少し待ってて。」祖母へ...
裏切りの影踏み7
- 2019/12/15
- 22:22
いつもいつも風邪をひいている鹿子。ついつい甘やかしてしまう。熱があっても、ミカンの缶詰めなら鹿子は食べてくれる。一番のお気に入りは桃の缶詰め。もっと太らせなくちゃ。また肺炎になってしまわないように。痩せっぽっちの鹿子に食べさせるため、鹿美は、普段から口酸っぱく「食べなさい。」と言い続けました。「これを食べ終わるまではテレビ見せないから!」「そんなに厳しく言うな。」鹿男はいつも鹿子の味方でした。「鹿...
裏切りの影踏み6
- 2019/12/14
- 22:22
あぁ、鹿子。どうして、そんなに体が弱いの。また風邪を引いてしまって、、、「鹿男さん、厄年の厄払いに行ってね。家も建てたし、鹿子は体が弱いんだから。お願いよ。」「厄払いぃ?そんなもん要るか!くだらん。」鹿美には、無理強いする力はありませんでした。鹿子が一才を超えた冬。鹿子は風邪をこじらせ、入院してしまいました。「先生。治りますでしょうか。」「うーん、、、厳しいですね。ひどい肺炎です。今夜が山でしょう...
裏切りの影踏み5
- 2019/12/13
- 22:22
「名前どうしようか。」鹿美の問い掛けに鹿男は、「お前が好きに付けたらいい。」女の子であることをまだ不満に思っているようでした。鹿美は、一人で名付けました。「私の鹿を入れよう。母さんと父さんが付けてくれた私の名前から1字入れよう。鹿子。あぁ、いい名前。鹿子にしよう。」大きな借金をして、家を新築したばかりでした。子供3人と祖母。家族6人が暮らす新しい家。田んぼの中にポツンと立つ鹿美の巣。緑色の瓦屋根は...
裏切りの影踏み4
- 2019/12/12
- 22:22
新緑。春の風は、どうしてこんなに気持ちいいのだろう。もうすぐ会える。かわいいかわいい女の子。私の母さんもこんな気持ちで私を待ってくれたのだろうか。母さん、三人目の子供が生まれるよ。あぁ、ばぁちゃん。ばぁちゃんに会いたいなぁ。吹き抜ける5月の風。産声をあげた赤ん坊は、女の子でした。「やっぱり。」確信した通りでした。鹿男は「ふん。おなごか。つまらん。」とにべもありませんでした。「いいんだ。この子は私の...